猫も杓子もエビデンス!な、この世の中のエビデンス入門 3選
エビデンスってなんだ
わかりません。
◯◯にはエビデンスがあるんだよ。△△にはエビデンスがない。エビデンスはあるなしで語られることもしばしば。
理想はエビデンスの中身を知っていることです。
中身を知っていれば「エビデンスがない」なんて言葉は出てこないと思います。最低でも「自覚症状を改善したが、死亡リスクは改善しなかった、というエビデンスがある」という感じに。
どんな患者さんを対照にした研究なのか、アウトカムは何に設定されているのか、結果はどうだったのか、妥当性は検証はされているのか…などなど言いはじめればキリがありません。
上級医が「✕✕だ!」と言ったら「✕✕なのか〜」と思ってしまいますが、そこはグッとこらえて調べ学習(できたらいいな)。
全てを一次文献から吟味できればいいのですが、そうも言ってられないのが現実。そこで、エビデンスに基づいた医学知識の集積であるUp To Dateで検索するのも手。しかし、有料会員登録していないとネ。
エビデンスに強い日本語本
そんなわけで、すぐ使える本を3つ紹介します。
内科診療ストロング・エビデンス
実用的なEBM本。文字は大きく、ページ数は300余りで通読も容易なサイズ感なのがアツい。
まずはEBMの実践方法からはじまります。そして気管支喘息、心房細動、認知症…とcommon diseaseについてのレビューが続きます。
まともな情報がこれだけ容易に手に入ることって他にはないです。普段の臨床行為と乖離していることもあり、自分の行動の妥当性を常に吟味すべきだと思わされました。
ホスピタリストのための内科診療フローチャート
これはココイチの本です。私は感動しました。まず症候・症候の診療についてフローチャート型式でまとまっており、解説がevidence basedで後述されていきます。内容は非常に実践的であり、わかりやすく、そして妥当性が高い本であると思います。文量もかなりのもので、ストロングエビデンスよりも網羅性が高いです。
医学は果てしない。だからこそ落とし所が必要です。その落とし所になるんだと思います。何気なく診療をこなすことをやめて、いつもここに帰れたらなって考えています。
高齢者診療で身体診察を強力な武器にするためのエビデンス
頭が空っぽならポケットに詰め込めばいいじゃない ②ポケットブックを持ち歩こう篇
病棟、救急外来から呼ばれて頭が真っ白。あらかじめポケットに情報を準備しておいて、鑑別や治療方針など確認しながら病棟(外来)に駆けていこう。
今回は、持ち歩いきたい参考書籍から5つ紹介します。良書と思うものよりも実用的なものを。
1. UCSFに学ぶ できる内科医への近道
ボロボロになるほどお世話になっています。現在、2冊目。
内容は、カルテの書き方、心電図の読み方、レントゲン写真の読み方、代表的内科疾患の鑑別・診断・治療、人工呼吸器管理、疼痛緩和、主要薬剤の利用法と注意点など幅広い。
困ったときに開くと必ず答えが載っていると言ってよい。勿論、一貫してevidence basedで診断基準や検査の感度/特異度の掲載もあり。出典文献も逐一掲載。
学生・研修医ともに必携だと思います。ただのアンチョコ本じゃ終わらない、足腰を強くしてくれる本物の一冊。
2. サンフォード感染症治療ガイド ほか
当直をしていると固定や縫合、切開など処置が必要になること頻回ですね。
道具選び、やり方は勿論、画像読影、専門医コンサルテーションのタイミングのポイントがまとめられています。
整形外科領域や創傷以外にも、顎関節脱臼、食道異物、精巣捻転、尿閉、鼓膜穿孔、外耳道異物、釣り針除去、咬傷、肘内障などカバー範囲は多岐に渡り、稀な疾患も載っています。
すいません、この本は絶対にポケットに入らない大きさです。。私は当直のときは救急外来に持っていってデスクに置いておいています。電子書籍もM2 PLUSにあります。
4. 今日の治療薬
言わずもがな、処方薬の辞典です。相互作用や用量、副反応などお世話になる機会は相当に多いはずです。
さすがにコレをそのままポケットに突っ込むのは苦行なので、電子書籍としてスマホアプリM2 PLUSにいれています。紙のほうが表などの閲覧性に優れていると感じますが、携帯性と検索性から専ら電子書籍を使っています。
初めて処方する薬剤は必ず検索をかけたい。
これは良書かはわかりません。エキスパートオピニオンというか、経験的治療も大いに含まれていることと思います。
しかし、人気が高いことも確かです。おそらく、網羅性が高いという一点において圧倒的だと思います。
どうしても調べてられないとき、たくさんあります。それでもやらないといけない、そんなときに指針を示してくれることと思います。
私はM2 PLUSにいれています。紙で持ち歩いている人もよく見ます。
医歯薬出版 (2016-12-28)
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頭が空っぽならポケットに詰め込めばいいじゃない ①メモをスマホに放り込め篇
Ns「先生、失神した患者さんの救急車、5分後に到着します」
どうしよ、どうしよ…
\ピーポーピーポー/
どうしよ、どうしよ、どうしよ、どうしよ…
プルルル…
Ns「先生、病棟の患者さんが39℃の熱を出してます」
どうしよ、どうしよ、どうしよ…
と、頭が真っ白になってしまうことの連続です。まだ頭の中に知識がないうちは、ポケットをパンパンにして現場に走っていくことをオススメします。
では、ポケットに何を詰めていくかというところを、
① メモをいつでもスマホから取り出せるようにする
② ポケットブックを持ち歩く
③ スマホアプリを活用する
以上の3本立てで紹介していきます。今日は①について書きます。
即戦力となるメモをスマホに蓄えていく
メモはとにかく実用的な形にして貯めることです。
Wernicke脳症の治療、せん妄の薬物治療、アセトアミノフェン中毒…などワンテーマずつまとめています。
でも、
”Wernicke脳症の治療はビタミンB1を投与する。Refeeding syndromeの併発に注意!”
などというメモでは、実際動くときに用が足りません。
"最初の3日間はチアミン500mg(アリナミンF®)を8時間毎に点滴静注(3分以上かけて)"
と具体的に記載します。院内に採用されている製品名まで記入するとオーダーが早いです。点滴は何に溶かすか(生食?注射用水?)、何分かけて投与するかなどもチェック。
メモする先は…\Evernote/
こんなかんじ。主にPCでまとめて、スマホで閲覧しています。
キーワード検索ができるので 速やかにデータを取り出せます。
ただし!病院には電波が悪い場所というのが必ずといっていいほどあります。オフラインでも使えるようにプランをプラス(3,100円/年)以上のものにアップグレードすることを強くオススメします。
日々、出会った疾患に関してEvernoteにノートしていけば、即戦力となる知識がどんどん蓄えられてゆくはずです。
自分で作ったメモならば内容をだいたい把握しているので、迅速に引き出すことができるところがアンチョコ本に勝るところです。
臨床であったことを机上で復習する機会も増えるので知識の定着を助けるはずです。
では、次回は ②持ち歩きたいオススメポケットブック5選を予定しています。
【胸ポケット用ペンケース】よーし!処置するぞ〜! →胸ポケットからペンがガラガラガラガラ
処置をするときは胸ポケットに注意
病棟で処置をするときには胸ポケットにペンなどが入っていると本当によくない。
清潔にしているところに落ちたら目も当てられない。。
私は腰椎穿刺せんとしているところにペンライトを落として以来、上半身の荷物は全部置いてから処置に行きます(´・ω・`)
そういうとき用に胸ポケット用のペンケースを使っている人も多いと思います。白衣に全部入れてるよ〜っていう人も、ペンケースがあると洗濯するときとか便利です。
自分が本当に買ってよかったと思える胸ポケット用ペンケースを紹介します。
\栃木オイルレザー 白衣の胸ポケット用ペンケース/
実際使ってみて好きなところ
①レザーの品質がよい:強い加工が施されているわけではないので使用感が出やすいが、経年変化を楽しめるところがアツい。
②白衣に噛ませるクリップ:端にクリップがついていて簡単に落ちないようになっています。
③名入れできる:名入れできるとモノがめっちゃ可愛くなるよね(*´ω`*)
④8色展開:自分は無難にレンガにしましたがブルーが最高にクールでちょっと後悔しています。その他ブラック、レッドなど。
⑤プレゼントになる:高品質、年齢・性別を問わない、サイズを問わないと贈り物向きです。
お値段なんと・・・
5,000円(税込)
と、けっこうするんですが、一時期注文殺到のため数ヶ月待ちになってこともあるくらいの人気商品なんですよ。使えばわかる。
画像を読めるようになりたい!
CTを読む自信がない
ない。
画像解剖の本に手を伸ばす。
前障…赤核…。ちょっとその前に、まずどっからどこまでが中大脳動脈かザックリお願いしていいですか?主要疾患の経時的変化とピットフォールからお願いしていいですか?話はそれからだ!的なところがありました。
しかし『画像診断に絶対強くなるワンポイントレッスン 〜病態を見抜き、サインに気づく読影のコツ』で、僕らはそういうところを即日把握することができるのです!
頭部、胸部、腹部、骨盤部に分けられていて、疾患もちょうど欲しいものがピックアップされています。激激激推しの1冊。
ざっくり勉強したら
画像診断cafeでは、全身のCT/MRI画像が網羅していますので実際の読影に役立ちます。カーソルを乗せると、解剖や支配血管などが一発で出てくるという夢のフリーサイト。
兄弟サイトの画像診断まとめでは疾患について解説されていて助かります。
道場に入門!
それでもやっぱり腕を上げるには実物をみることです。
腹部救急医学会提供の急性腹症CT演習サイト。ここにはレベル別に1500問を超える腹部の救急CTが載っています。
医用画像界のgoogle画像検索です。ここで"nivau"だとか"early CT sign"だとか入力するとブワーっと出てきます。
画像読影はいつまで経っても怖いもの。いつか克服できる日を目指して…。
羊土社
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【医学生、研修医向け】問題解決の方法を知っているかい。
パラダイム・シフトを起こした一冊の本
学生時代に読んで最も衝撃を受けた本です。
これは知識を与える本ではなく、問題を解決する方法を教えてくれる本です。
金原出版
売り上げランキング: 352,617
神戸大学の4年生へのレクチャーを文字起こしにしたもので、とても読みやすいです。4年生とは思えないほどに学生たちがハイレベルになっていく様子がわかります。
タイトルには感染症内科とありますが、これはもう臨床医学全般に適応できる金言が揃っていると約束できます。
情報に重み付けをする
私の学生の頃はキーワードを詰め込む勉強がメインで、それ以上のことは想像もつきませんでした。
たとえば心筋梗塞。突然の前胸部絞扼感。背中、左肩に放散。心電図でST変化。心筋マーカー上昇。2時間くらいでミオグロビンがあがってきます。とかね。
では、医師になり、実際に胸の痛い患者さんに相対することになります。
「胸が締め付けられるように痛くなってきて30分経った今も痛いです。でもだんだんよくなって来ました。」心電図は正常、心筋マーカーも上昇していない。
こういうことってままあります。そういうときに、この人にどれだけ緊急疾患"らしさ"があるのか判断する必要があります。
どういう情報があればこの患者さんの問題をより正しく解決してけるのか。情報の種類や重さを理解していなければなりません。
この本に登場する学生は先生から、
それはどれくらいの割合の人に見られる症状?
その検査で何がどのくらい変わる?陽性なら診断できる?陰性なら除外できる?
論文には◯◯と書いてあります、というけれど、論文中の患者さんってどんな人?目の前の患者さんに本当にその情報を適応できるの?
というようなことをガンガン尋ねられます。
情報に重み付けをして、うまく引き出し、いまここにいる患者さんの問題を解決していかないといけない。
そういう価値観があると知らせてくれたのがこの本でした。
それからは尤度比、感度/特異度、論文のmethodなど、大切にしようと思うことが変わっていきました。
以降、岩田健太郎先生の本を読むようになりましたが、私はこの本がいちばんお気に入りです。